温泉の浴槽の平均的な深さについて

温泉施設の浴槽は、家庭用の浴槽とは異なり、複数人が同時に入浴することを前提として設計されています。

ただし、日本全国の温泉施設について「浴槽の平均水深は○cm」と集計した公的な統計があるわけではありません。

そのため、温泉浴槽の深さについて説明する場合は、全国的な「平均値」ではなく、温浴施設で採用されることの多い設計上の目安として考える必要があります。

一般的な座浴タイプの大浴槽では、50~60cm程度が一つの目安となり、なかでも60cm前後を想定して設計される例があります。

したがって、「温泉の浴槽は平均50~60cm」と断定するよりも、「一般的な座浴型の浴槽では50~60cm程度が目安」と理解するのが適切です。

目次

一般的な温泉浴槽では50~60cm程度が目安

座って入る浴槽では60cm前後の設計例がある

温泉旅館やスーパー銭湯などにある一般的な大浴槽は、浴槽内に座った状態で入浴することを想定して設計されています。

温浴施設の設計に関する資料では、座って利用する浴槽について、深さ60cm程度とする設計例が示されています。

60cm前後の深さがあれば、成人が浴槽の底や段差部分に座ったときに、胸から肩付近まで湯につかりやすくなります。

ただし、利用者の身長や浴槽内の段差によって湯につかる位置は異なるため、60cmあれば必ず肩までつかるという意味ではありません。

50cm程度の浴槽も珍しくない

施設や浴槽の種類によっては、50cm前後の比較的浅い設計も採用されます。

特に、利用者が座りやすいよう浴槽内に腰掛けを設けていたり、高齢者などの利用を考慮していたりする場合には、深さが調整されることがあります。

したがって、一般的な大浴槽については、おおむね50~60cm程度を設計上の目安として考えると分かりやすいでしょう。

温泉の浴槽の深さに全国共通の規定はある?

全国一律で「50cm以上」と決められているわけではない

温泉施設だからといって、全国すべての浴槽について「深さは50cm以上」「60cmにしなければならない」と法律で統一されているわけではありません。

公衆浴場については、公衆浴場法をもとに各自治体が条例などで構造設備や衛生管理に関する基準を定めています。

そのため、具体的な浴槽の構造基準は地域によって異なる場合があります。

自治体によっては50cm以上の基準がある

自治体によっては、一定の浴槽について最低限必要な深さを条例で定めています。

たとえば神戸市の公衆浴場法施行条例では、一定の浴槽について深さ0.5m以上とする構造基準が設けられています。

0.5mは50cmです。

このことからも、50cm程度という深さは、公衆浴場の浴槽として特別に珍しい寸法ではないことが分かります。

ただし、これは神戸市の条例上の基準であり、日本全国の温泉施設にそのまま適用されるものではありません。

国は浴槽の深さより総合的な安全性を重視している

手すりや踏段などへの配慮が求められる

厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」では、全国一律に浴槽の水深を何cmにするかを定めているわけではありません。

その一方で、必要に応じて手すりや浴槽内の踏段を設けるなど、高齢者や子どもが安全に利用できる構造とすることが望ましいとされています。

つまり、浴槽の安全性は単純な深さだけで決まるものではありません。

浴槽への出入りのしやすさや、段差、手すり、床の滑りにくさなどを総合的に考える必要があります。

深さ60cmでもステップを利用すれば浅く入れる

大浴槽では、浴槽内部に一段低いステップや腰掛けが設けられていることがあります。

たとえば浴槽自体の深さが60cm程度でも、高さ30cm程度のステップに座れば、身体が湯につかる深さを調整できます。

同じ浴槽の中でも、座る位置によって全身浴に近い入り方をしたり、比較的浅く入ったりすることが可能です。

そのため、「浴槽の深さ60cm」という数字だけでは、実際の入浴時に身体がどの程度湯につかるのかまでは判断できません。

浴槽の深さによって入浴の感覚は変わる

浅めの浴槽

40~50cm程度の比較的浅い浴槽では、座った状態でも上半身の一部が湯面から出やすくなります。

温泉施設では、半身浴向けの浴槽やぬる湯などを、一般的な大浴槽より浅く設計することがあります。

身体がお湯につかる範囲が小さくなるため、全身浴とは異なる入浴感になります。

ただし、浅い浴槽だから長時間入っても問題ないとは限りません。

入浴時の身体への負担は、浴槽の深さだけでなく、湯温や入浴時間、体調などによっても変わります。

50~60cm程度の一般的な浴槽

一般的な温泉の大浴槽で想定しやすいのが、50~60cm程度の深さです。

浴槽内に座ることで、胸から肩付近まで湯につかりやすく、全身浴をしやすい深さといえます。

浴槽内にステップがあれば、座る場所を変えて身体の沈み方を調節することもできます。

深湯や立ち湯

温泉施設によっては、一般的な座浴型の浴槽よりもかなり深い「深湯」や「立ち湯」を設けている場合があります。

立ち湯では、施設によって1m前後、あるいはそれ以上の水深が設けられることもあります。

ただし、深湯や立ち湯には全国共通の水深規格があるわけではありません。

浴槽の構造や利用方法は施設によって大きく異なるため、一般的な大浴槽とは分けて考える必要があります。

深い浴槽では水圧の影響が大きくなる

水深が増えるほど水圧は高くなる

水中では、深い位置ほど水圧が高くなります。

そのため、身体をより深く湯に沈めるほど、下半身を中心に水圧の影響を受けやすくなります。

一般的な全身浴と半身浴で身体への感覚が異なる理由の一つが、この水圧の違いです。

浮力は水深だけで決まるわけではない

「深い浴槽ほど浮力が強くなる」と単純に説明されることがありますが、厳密には少し異なります。

浮力は、身体が押しのけている水の体積などによって決まります。

そのため、身体のより広い範囲を湯の中に沈めれば浮力を感じやすくなりますが、単純に浴槽の水深だけによって浮力が決まるわけではありません。

深い浴槽では身体をより深く沈めやすいため、結果として浮力を感じやすくなると考えると分かりやすいでしょう。

浴槽の深さと実際の水深は同じとは限らない

浴槽の縁まで湯を張るとは限らない

浴槽について「深さ60cm」と表記されていても、実際の水深が必ず60cmあるとは限りません。

浴槽の構造上の深さは、底面から縁までの高さを指す場合があります。

一方、実際の湯面が浴槽の縁より低ければ、実際の水深はそれより浅くなります。

そのため、「浴槽の深さ」と「湯の水深」は区別して考えることが重要です。

岩風呂では場所によって深さが変わる

露天風呂や岩風呂では、浴槽の底面が完全に平らではないことがあります。

浴槽の一部に段差や石が配置されていれば、同じ浴槽でも場所によって水深が異なります。

浅い場所から徐々に深くなる浴槽もあるため、数字だけでは実際の入浴感を判断できない場合があります。

露天風呂の深さは内湯と違う?

座浴タイプなら大きく変わらないことが多い

露天風呂だからといって、必ず内湯より浅い、あるいは深いわけではありません。

座って入浴する一般的な露天風呂であれば、内湯と同じように50~60cm程度を一つの設計目安として考えることができます。

一方、岩風呂の場合は底面に凹凸や傾斜があり、水深が一定でないこともあります。

また、景観を楽しむために浅めの構造にしたり、特色を出すために深湯にしたりする施設もあります。

そのため、露天風呂についても全国共通の「平均的な深さ」があるわけではありません。

浴槽が深くなるほど必要なお湯の量も増える

水深10cmの違いでも湯量は大きく変わる

浴槽の深さは、入浴の快適性だけでなく、施設が使用する湯量にも大きく関係します。

たとえば、浴槽の面積が20㎡で完全な直方体だと仮定します。

水深50cmの場合は、20㎡×0.5m=10㎥となり、約10,000Lの湯が必要です。

水深60cmの場合は、20㎡×0.6m=12㎥となり、約12,000Lになります。

水深70cmの場合は、約14,000Lです。

つまり、20㎡の浴槽では、水深が10cm深くなるだけで約2,000Lも容量が増える計算になります。

深さはエネルギー消費にも関係する

浴槽容量が増えれば、それだけ多くのお湯を加温したり、一定の温度に保ったりする必要があります。

そのため、浴槽の深さは施設のボイラー能力や給湯設備、循環設備、エネルギー消費量などにも関係します。

温泉施設では、入浴者の快適性や安全性だけでなく、設備の能力やランニングコストなども考慮しながら浴槽の大きさや深さを決めています。

子どもや高齢者は浴槽の深さに注意が必要

成人には普通でも子どもには深いことがある

50~60cm程度の浴槽は、成人にとっては一般的な深さでも、小さな子どもにとってはかなり深く感じることがあります。

特に身長の低い子どもでは、浴槽の底に足がついていても顔が湯面に近くなることがあります。

そのため、子どもが大浴槽を利用する際は、大人が近くで見守ることが重要です。

高齢者は出入りのしやすさも重要

高齢者の場合は、単純な浴槽の深さだけでなく、またぐ部分の高さや浴槽内部の段差、手すりの位置なども重要です。

温浴施設では、手すりや踏段を設けるなどして利用しやすくすることがあります。

浴槽が深すぎると立ち上がりにくくなる場合もあるため、利用者層に合わせた設計が求められます。

温泉の浴槽の平均的な深さに関するまとめ

日本全国の温泉施設を対象として、浴槽の平均水深を算出した公的な統計は確認されていません。

そのため、「温泉浴槽の平均は○cm」と一律に断定するのは適切ではありません。

一般的な座浴型の大浴槽については、50~60cm程度が設計上の一つの目安で、60cm前後とする設計例もあります。

一方で、浅湯や半身浴槽はそれより浅く、深湯や立ち湯では1m前後またはそれ以上になることもあります。

また、自治体によっては浴槽の最低深さを条例で定めている場合がありますが、全国共通の基準ではありません。

したがって、温泉浴槽の深さについては、「一般的な大浴槽では50~60cm程度が目安。ただし、浴槽の種類や施設によって大きく異なる」と理解するのが適切です。

以上、温泉の浴槽の平均的な深さについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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