温泉の「ペーハー(pH)」とは、温泉水が酸性・中性・アルカリ性のどの性質を持っているかを示す指標です。
現在は「ピーエイチ」と読むのが一般的ですが、日本では以前からドイツ語由来の「ペーハー」という呼び方も広く使われており、温泉について紹介する際にも「温泉のペーハー」という表現が使われることがあります。
pHは温泉分析書にも記載される基本的な情報の一つです。
数値を確認することで、その温泉が酸性寄りなのかアルカリ性寄りなのかを判断でき、入浴したときの肌触りや刺激感などを知る目安にもなります。
ただし、pHだけで温泉の泉質や成分濃度、効能などが決まるわけではありません。
温泉の特徴を正しく理解するためには、泉質や含有成分、泉温などとあわせて確認することが重要です。
温泉のpHはどのように分類される?
pHの数値が低いほど酸性、高いほどアルカリ性になる
一般的にpHは、数値が低いほど酸性が強く、数値が高いほどアルカリ性が強くなります。
一般的な水溶液ではpH7付近が中性の基準とされますが、温泉では液性を次のように分類します。
| 液性 | pH |
|---|---|
| 酸性 | 3未満 |
| 弱酸性 | 3以上6未満 |
| 中性 | 6以上7.5未満 |
| 弱アルカリ性 | 7.5以上8.5未満 |
| アルカリ性 | 8.5以上 |
たとえばpH2.5であれば液性は酸性、pH7.0であれば中性、pH9.0であればアルカリ性となります。
温泉施設の公式サイトや館内表示などで「pH9.2のアルカリ性のお湯」といった説明を見かけることがありますが、これは温泉水の液性を表しています。
pHは対数尺度で表される
pHは、単純に数字が一定間隔で並んでいる指標ではありません。
pHは対数尺度であり、一般的な説明ではpHが1違うと水素イオンの量の指標として約10倍の差があります。
たとえば、pH5とpH6では約10倍、pH4とpH6では約100倍の違いとなります。
そのため、pH2とpH4について「数字が2しか違わない」と考えるのは適切ではありません。
数値が大きく酸性側またはアルカリ性側に偏っている温泉ほど、液性として特徴の強いお湯と考えることができます。
温泉のpHから何がわかる?
温泉水の酸性・アルカリ性を判断できる
pHを見ることで、温泉水が酸性・中性・アルカリ性のどこに位置するのかを判断できます。
温泉分析書にpHが記載されていれば、その温泉のお湯の性質を知る一つの手がかりになります。
特に酸性やアルカリ性が強い温泉では、入浴した際の刺激感や肌触りに特徴が現れることがあります。
肌触りを知る目安になる
pHは、温泉に入ったときの肌触りにも関係する要素です。
アルカリ性のお湯では、肌がすべすべ、つるつるしたように感じることがあります。
一方、酸性の強いお湯では、肌の状態によってピリピリとした刺激を感じる場合があります。
ただし、温泉の肌触りはpHだけで決まるわけではありません。
温泉に含まれるイオンなどの成分、その濃度、泉温などさまざまな要素が関係しています。
そのため、「pHが高いほど必ずぬるぬるする」と単純に判断することはできません。
酸性の温泉にはどのような特徴がある?
pH6未満は酸性側に分類される
温泉の液性区分では、pH3未満が「酸性」、pH3以上6未満が「弱酸性」とされています。
特にpHが2前後などの低い温泉では、酸性の性質が強くなります。
ここで注意したいのが、液性としての「酸性」と、泉質名として使われる「酸性泉」は厳密には同じ意味ではないことです。
「pH3未満だから必ず泉質が酸性泉になる」とは限りません。
一般向けに温泉のpHを説明する場合は、「酸性のお湯」「液性が酸性の温泉」と表現すると混同しにくくなります。
肌に刺激を感じる場合がある
酸性の強い温泉では、人によって肌にピリピリとした刺激を感じることがあります。
特に、傷や肌荒れがある場合、ひげそり直後、皮膚が敏感な場合などには、刺激を強く感じる可能性があります。
痛みやかゆみ、強い違和感などを感じた場合には、無理に入浴を続けないことが大切です。
入浴後の対応は施設の案内に従う
「温泉成分を肌に残したほうがよい」と考え、入浴後にシャワーを使わない人もいます。
しかし、強い酸性のお湯などでは、施設によって入浴後に真水や上がり湯で流すよう案内している場合があります。
すべての酸性温泉で必ず洗い流す必要があるわけではありません。
温泉ごとに成分や性質が異なるため、浴場に掲示されている入浴上の注意や施設側の案内を優先しましょう。
中性の温泉にはどのような特徴がある?
pH6以上7.5未満が中性に分類される
温泉の液性区分では、pH6以上7.5未満が中性です。
酸性やアルカリ性の強い温泉と比べると、pHという観点では性質が穏やかな範囲に位置します。
ただし、「中性だから肌に必ずやさしい」という意味ではありません。
温泉による刺激はpHだけでなく、泉温や含有成分、成分濃度、入浴時間、利用者の皮膚の状態などにも左右されます。
肌触りだけでは特徴がわかりにくい場合もある
中性のお湯では、強い酸性のお湯のような刺激感や、高アルカリ性のお湯のような特徴的なすべすべ感を感じにくいことがあります。
一方で、同じ中性の温泉でも、含まれている成分によって肌触りや湯上がりの感覚は変わります。
pHだけを見て温泉全体の特徴を判断しないことが大切です。
アルカリ性の温泉にはどのような特徴がある?
pH7.5以上はアルカリ性側に分類される
温泉では、pH7.5以上8.5未満が「弱アルカリ性」、pH8.5以上が「アルカリ性」に分類されます。
また、単純温泉のうちpH8.5以上のものは「アルカリ性単純温泉」と呼ばれます。
温泉施設で「アルカリ性単純温泉」と表示されている場合は、単純温泉の基準を満たし、なおかつpH8.5以上のお湯であることを意味します。
肌がすべすべしたように感じやすい
アルカリ性の温泉では、皮膚表面の皮脂や角質に作用することで、入浴中や入浴後に肌がすべすべ、つるつるしたように感じることがあります。
この特徴から、アルカリ性の温泉が「美人の湯」「美肌の湯」などと紹介されることもあります。
ただし、肌触りが良いことと医学的な美肌効果があることは同じではありません。
「pHが高ければ高いほど美肌に良い」と考えるのも適切ではありません。
アルカリ性が強い場合は乾燥にも注意する
アルカリ性が強くなるほど、皮膚表面の皮脂や角質への作用も強くなる可能性があります。
そのため、人によっては入浴後に肌が乾燥したり、つっぱったように感じたりすることがあります。
高pHのお湯だから無条件に肌に良いわけではなく、肌の状態を確認しながら入浴することが大切です。
温泉のぬるぬる感はpHだけで決まる?
高pHの温泉はすべすべ感が出やすい
アルカリ性の温泉では、皮膚表面への作用によって、独特のすべすべ感や滑らかな感覚が生じることがあります。
そのため、高pHの温泉と「ぬるぬるしたお湯」が結び付けられることは少なくありません。
含有成分なども肌触りに関係する
ただし、温泉のぬるぬる感をpHだけで説明することはできません。
お湯に含まれる成分やその濃度なども、肌触りに影響します。
そのため、
「pH9なら必ずぬるぬるする」
「pH10のほうがpH9より必ずぬるぬるする」
とは限りません。
pHは肌触りを予測する一つの目安として考えるのが適切です。
pHが高いほど温泉成分が濃いわけではない
pHは成分量を表す数字ではない
温泉について誤解されやすいのが、「pHが高い温泉ほど成分が濃い」という考え方です。
pHは酸性・アルカリ性を示す指標であって、温泉成分の総量を示す数字ではありません。
たとえば、pH10の温泉だからといって、pH7の温泉より温泉成分が多く含まれているとは限りません。
温泉にどの程度の成分が含まれているのかを確認したい場合は、温泉分析書に記載されている溶存物質量や各成分の含有量などを見る必要があります。
pHと泉質は同じものではない
泉質は含まれる成分などによって分類される
温泉にはpHとは別に「泉質」があります。
代表的な泉質には、次のようなものがあります。
- 単純温泉
- 塩化物泉
- 炭酸水素塩泉
- 硫酸塩泉
- 二酸化炭素泉
- 含鉄泉
- 酸性泉
- 含よう素泉
- 硫黄泉
- 放射能泉
泉質は、温泉に含まれている成分やその量などを基準として分類されます。
一方のpHは、温泉水の酸性・中性・アルカリ性を示すものです。
同じ泉質でもpHが異なることがある
泉質とpHは別の指標であるため、同じ泉質でもpHが異なる場合があります。
たとえば単純温泉の中には中性のお湯もあれば、pH8.5以上のアルカリ性単純温泉もあります。
そのため、温泉の性質を詳しく知りたいのであれば、泉質名だけを見るのではなく、pHや含有成分などもあわせて確認するとよいでしょう。
「酸性」と「酸性泉」の違いに注意
酸性はpHによる液性の分類
温泉でいう「酸性」は、pHによって分類される液性の一つです。
pH3未満であれば、液性として「酸性」と分類されます。
酸性泉は泉質名の一つ
これに対して「酸性泉」は、療養泉の泉質分類の一つです。
酸性泉になるかどうかは、単純にpHの数値だけで決まるものではなく、所定の成分基準に基づいて判断されます。
そのため、
「pHが低い温泉=すべて酸性泉」
という理解は正確ではありません。
温泉の記事を書く際には、「酸性のお湯」と「泉質としての酸性泉」を区別して表現することが重要です。
温泉分析書を見るとpHを確認できる
温泉分析書には温泉のさまざまな情報が記載されている
温泉施設には、温泉分析書や温泉成分分析書が掲示されていることがあります。
分析書を見ると、pHだけでなく、源泉の特徴や含有成分などの情報を確認できます。
一般的には、
- 源泉名
- 泉温
- pH
- 泉質
- 含有成分
- 分析年月日
などが記載されています。
温泉旅行の際に温泉分析書を確認すると、実際に入浴したときの肌触りとpHや泉質を比較でき、温泉ごとの違いをより楽しみやすくなります。
分析書のpHと浴槽のお湯が完全に同じとは限らない
温泉分析書に記載されているpHは重要な情報ですが、実際に浴槽に入っているお湯の状態が常に完全に同じとは限りません。
源泉が湧き出してから浴槽に届くまでの間には、空気との接触や温度変化などによって温泉水の状態が変わることがあります。
さらに施設によっては、
- 加水
- 加温
- 循環ろ過
- 消毒
などが行われる場合があります。
そのため、温泉分析書のpHは温泉の特徴を知る重要な目安ではあるものの、浴槽水の状態そのものを完全に表しているとは限らない点も覚えておきましょう。
温泉のpHについてよくある誤解
pHが高いほど良い温泉とは限らない
pH10以上などの高アルカリ性温泉が特徴的な温泉として紹介されることがあります。
しかし、pHが高いからといって温泉として優れているという意味ではありません。
酸性、中性、アルカリ性にはそれぞれ異なる特徴があります。
pHの数値だけで温泉に優劣を付けることはできません。
pHが高いほど美肌効果が高いとは限らない
アルカリ性のお湯は肌がすべすべしたように感じやすいため、美肌と結び付けて紹介されることがあります。
しかし、pHが高くなるほど美肌効果が比例して高くなるわけではありません。
強いアルカリ性のお湯では、人によって皮脂が落ちすぎて乾燥や刺激を感じる可能性もあります。
酸性のお湯だから危険というわけではない
酸性の強いお湯では肌に刺激を感じることがありますが、「酸性だから危険な温泉」と一律に判断する必要はありません。
温泉施設では泉質や成分などを考慮した入浴上の注意が掲示されています。
自分の体調や肌の状態を確認しながら、施設の案内に従って入浴することが重要です。
pHの特徴が強い温泉に入るときの注意点
傷や肌荒れがある場合は刺激に注意する
酸性やアルカリ性が強いお湯では、皮膚の状態によって刺激を感じやすくなることがあります。
傷、湿疹、肌荒れなどがある場合には特に注意しましょう。
入浴中に痛みや強いかゆみ、違和感などを感じた場合は、無理に入り続けないことが大切です。
長湯を避ける
入浴による身体への負担はpHだけではなく、泉温や入浴時間などによっても変わります。
特徴の強い温泉だからといって長時間入浴すれば効果が高くなるわけではありません。
特に熱いお湯や刺激を感じやすいお湯では、体調を見ながら無理のない範囲で入浴しましょう。
温泉施設の注意事項を確認する
温泉は源泉によって成分や性質が大きく異なります。
そのため、「酸性なら必ずこうする」「アルカリ性なら必ずこうする」と一律に考えるのではなく、浴場に掲示されている入浴上の注意を確認することが大切です。
特に入浴後に温泉水を洗い流すかどうかについては、施設の案内を優先するとよいでしょう。
pHだけで温泉の効能を判断することはできない
温泉の作用には複数の要素が関係する
「pH9だから美肌に効く」「pH2だから特定の症状に効く」といったように、pHの数値だけから温泉の効能を判断することはできません。
温泉浴では、温泉に含まれる成分だけでなく、温熱作用や水圧、浮力、周囲の環境、入浴によるリラックスなど、さまざまな要因が関係します。
温泉の効能を確認したい場合は、pHではなく、その温泉に掲示されている泉質別適応症などの情報を確認することが重要です。
まとめ
温泉のペーハー(pH)は、温泉水が酸性・中性・アルカリ性のどの範囲にあるのかを示す指標です。
温泉では、pH3未満が酸性、pH3以上6未満が弱酸性、pH6以上7.5未満が中性、pH7.5以上8.5未満が弱アルカリ性、pH8.5以上がアルカリ性に分類されます。
酸性の強いお湯では刺激を感じる場合があり、アルカリ性のお湯では肌がすべすべしたように感じることがあります。
ただし、温泉の肌触りや特徴はpHだけで決まるものではありません。
また、pHは温泉成分の濃さを表す数字ではなく、pHが高いほど効能や美肌効果が高いというものでもありません。
温泉の特徴を正しく理解するためには、pHだけでなく泉質、含有成分、泉温、温泉分析書などを総合的に確認することが大切です。
以上、温泉のペーハー(pH)の意味や特徴についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
