温泉に入ったとき、肌を触ると「ぬるぬるする」「つるつるする」「とろっとしている」と感じることがあります。
この独特の感触には、主に温泉のpHや含まれている成分、そして温泉水と皮膚表面との相互作用が関係しています。
なかでも、ぬめりやつるつる感を感じやすいのがアルカリ性の温泉です。
ただし、温泉のぬめりはアルカリ性だけで決まるわけではありません。
炭酸水素イオンをはじめとした溶存成分や、その濃度、皮膚の状態などによっても感じ方は変わります。
ここでは、温泉に入ったときにぬめりを感じる原因について詳しく解説します。
アルカリ性の温泉がぬめりを感じやすい理由
温泉のぬめりを考えるうえで重要なのが、温泉水のpHです。
pHは水溶液が酸性なのかアルカリ性なのかを示す指標で、一般的にpHの数値が高くなるほどアルカリ性が強くなります。
アルカリ性の温泉では、肌に触れたときに独特のつるつる感やぬるぬる感を覚えることがあります。
アルカリ性のお湯が古い角質や皮脂に作用する
人の皮膚表面には、皮脂や古くなった角質があります。
アルカリ性のお湯には、こうした古い角質や余分な皮脂を落としやすくする性質があります。
そのため、入浴中に腕や脚を触ると、肌同士が滑りやすくなり、「ぬるぬるする」「つるつるする」と感じることがあります。
この感触は、水そのものに強い粘り気が生じているというより、温泉水の作用によって皮膚表面の状態が変化していることが大きな要因です。
「皮脂が石けんになるから」という説明は単純化しすぎないほうがよい
アルカリ性温泉のぬめりについて、「皮脂とアルカリが反応して石けんになるため」と説明されることがあります。
化学的な反応をイメージするうえでは分かりやすい表現ですが、実際の皮膚表面には脂質だけでなく、角質やタンパク質、水分などさまざまな物質が存在しています。
そのため、温泉のぬめりを「皮脂が石けんになるから」とだけ説明するのは正確ではありません。
一般的には、アルカリ性のお湯が古い角質や余分な皮脂に作用し、肌表面が滑らかになるためと理解するとよいでしょう。
アルカリ性単純温泉ではつるつる感を感じやすい
ぬるぬる・つるつるした温泉として代表的なのが、アルカリ性単純温泉です。
アルカリ性単純温泉とは
環境省の鉱泉分析法指針では、単純温泉のうちpH8.5以上のものをアルカリ性単純温泉としています。
単純温泉は、温泉成分が少ないという意味ではなく、一定の温度条件などを満たしながら、療養泉として分類される特定成分の含有量が規定値に達していない温泉を指します。
アルカリ性単純温泉では、古い角質や余分な皮脂が落ちやすくなることから、入浴中や入浴後に肌が滑らかに感じられる場合があります。
こうした特徴から、「美人の湯」「美肌の湯」などと紹介されることもあります。
ただし、「美人の湯」や「美肌の湯」は公的な泉質分類や医学的な効能名称ではありません。
観光地や温泉施設などで使われる通称として理解しておくのが適切です。
炭酸水素塩泉でも滑らかな肌触りを感じることがある
ぬめりやつるつる感のある温泉として、炭酸水素塩泉が挙げられることもあります。
炭酸水素塩泉とは、炭酸水素イオンを主要な陰イオンとして含む泉質です。
炭酸水素イオンだけでぬめりの強さが決まるわけではない
炭酸水素塩泉のなかには、入浴したときに滑らかな肌触りを感じる温泉があります。
ただし、
「炭酸水素イオンが多いほど必ずぬるぬるする」
というわけではありません。
温泉水には、ナトリウムイオンやカルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオンなど、さまざまな成分が含まれています。
温泉の肌触りは、これらの成分構成や濃度、pHなどが複合的に関係して決まります。
そのため、炭酸水素塩泉だからといって、すべての温泉で強いぬめりが感じられるわけではありません。
炭酸水素塩泉と炭酸泉は別物
「炭酸水素塩泉」と「炭酸泉」は名称が似ていますが、温泉の分類としては異なります。
一般に炭酸泉と呼ばれるものは、温泉水に遊離二酸化炭素を多く含む二酸化炭素泉です。
一方、炭酸水素塩泉では、炭酸水素イオンが泉質を特徴づけています。
そのため、
「炭酸水素塩泉だから泡がたくさん付く」
とは限りません。
肌に細かな泡が付くような特徴と、つるつる・ぬるぬるした肌触りは分けて考える必要があります。
ナトリウムなど温泉全体の成分構成も肌触りに影響する
温泉のぬめりは、pHだけを見れば判断できるものではありません。
温泉水にはさまざまなイオンが溶け込んでいます。
たとえば、主な成分としては次のようなものがあります。
- ナトリウムイオン
- カルシウムイオン
- マグネシウムイオン
- 炭酸水素イオン
- 塩化物イオン
- 硫酸イオン
こうした成分の種類や濃度によって、温泉水の性質や肌に触れたときの感覚が変化します。
ただし、「ナトリウムそのものがぬめりを生み出す」と考えるのは適切ではありません。
重要なのは、pHを含めた温泉水全体の成分構成です。
同じ程度のpHを示す温泉でも、成分構成が異なれば、ぬめりの感じ方が異なることがあります。
メタケイ酸が多いと必ずぬるぬるするわけではない
温泉の紹介では、メタケイ酸という成分が取り上げられることがあります。
メタケイ酸はケイ酸系の成分の一つで、「美肌成分」などと紹介されることがあります。
メタケイ酸だけをぬめりの原因と考えない
温泉施設などでは、「メタケイ酸が豊富なので、とろとろのお湯」と紹介されるケースもあります。
しかし、メタケイ酸の含有量だけから、温泉のぬめりやとろみを判断することはできません。
実際の肌触りには、pHや炭酸水素イオンをはじめ、さまざまな成分が関係します。
そのため、
「メタケイ酸が多い=必ずぬるぬるする」
とは考えないほうがよいでしょう。
メタケイ酸は温泉の特徴を判断する材料の一つではありますが、ぬめりの唯一の原因ではありません。
「ぬめり」と「とろみ」は必ずしも同じではない
温泉では、「ぬるぬる」「つるつる」「とろとろ」といった表現がよく使われます。
ただし、それぞれが必ず同じ現象を指しているとは限りません。
ぬるぬる・つるつるは肌表面の滑りやすさ
アルカリ性温泉などで感じやすい「ぬるぬる」「つるつる」は、皮膚表面が滑りやすくなることによって生じる感覚です。
腕や脚を手でなでたとき、石けんを使ったあとのように滑る感覚として認識されることがあります。
とろとろは必ずしも水の粘度が高いことを意味しない
「とろとろのお湯」という表現から、水そのものの粘度が大幅に高くなっているように思うかもしれません。
しかし、一般的な温泉で感じる「とろとろ感」が、必ずしも物理的な粘度の高さによるものとは限りません。
肌表面が滑りやすくなることで、お湯そのものがとろっとしているように感じることもあります。
そのため、
「とろとろする温泉=水自体に強い粘りがある」
と単純には判断できません。
pHが高ければ必ずぬめりが強くなるわけではない
アルカリ性温泉ではつるつる感を感じやすい傾向がありますが、pHの数値だけでぬめりの強さを比較することはできません。
たとえば、
「pH10の温泉なら、必ずpH9の温泉よりぬるぬるする」
とは限りません。
pHは重要な判断材料の一つですが、肌触りには溶存成分の種類や濃度なども関係します。
また、同じ温泉でも入浴する人の皮脂量や肌の状態などによって、ぬめりの感じ方が異なる可能性があります。
温泉の特徴を詳しく知りたい場合は、pHだけではなく、施設に掲示されている温泉分析書の泉質名や成分も確認するとよいでしょう。
ぬるぬるする温泉が「美人の湯」と呼ばれる理由
アルカリ性単純温泉や一部の炭酸水素塩泉などは、「美人の湯」「美肌の湯」と紹介されることがあります。
その背景には、入浴によって肌表面の古い角質や余分な皮脂が落ちやすくなり、肌が滑らかに感じられることがあります。
「美肌の湯」は美容効果を保証する名称ではない
温泉に入った直後に肌がすべすべしたように感じることはありますが、これは必ずしも肌質そのものが根本的に改善したことを意味するわけではありません。
主として皮膚表面の状態が変化したことで、滑らかな触感を得られていると考えられます。
また、「美人の湯」「美肌の湯」は医学的な効果を保証する公式名称ではありません。
温泉の魅力や肌触りを表現する通称として使われていると考えるのが適切です。
ぬるぬるする温泉でも入浴後に肌が乾燥することがある
ぬるぬるする温泉に入ると、「肌がしっとりして保湿されている」と感じることがあります。
しかし、アルカリ性の強い温泉では、入浴後に肌が乾燥する場合があります。
皮脂が落ちすぎると乾燥しやすくなる
皮脂には、皮膚表面から水分が蒸発するのを抑える役割があります。
アルカリ性のお湯によって余分な皮脂が落ちることはありますが、皮脂が必要以上に失われると、入浴後に肌がつっぱったり乾燥したりすることがあります。
特に乾燥肌や敏感肌の人は注意が必要です。
入浴するときは、次のような点を意識するとよいでしょう。
- 長時間の入浴を避ける
- ナイロンタオルなどで肌を強くこすらない
- 入浴後は必要に応じて保湿剤を使用する
- 肌に刺激や違和感を感じた場合は無理に入浴を続けない
ぬめりが強いからといって、保湿効果も強いとは限らない点を覚えておきましょう。
浴槽や岩のぬめりは肌で感じるぬめりとは別の場合がある
温泉に入ったとき、肌だけでなく浴槽の底や岩、床などがぬるぬるしていることがあります。
この場合は、アルカリ性温泉によって肌が滑りやすくなる現象とは分けて考える必要があります。
浴槽表面の付着物が原因になることもある
浴槽や岩の表面では、温泉成分の析出や生物由来の付着物などによって、独特のぬめりが生じる場合があります。
ただし、ぬめりがあるという理由だけで「不衛生な温泉」と判断することはできません。
天然温泉では、泉質や設備、湯の管理方法などによって浴槽表面の状態が異なるためです。
一方で、ぬるぬるした浴槽や床は滑りやすく、転倒につながることがあります。
特に露天風呂や岩風呂では、足元を確認しながらゆっくり移動することが大切です。
温泉のぬめりはpHと成分の組み合わせによって生まれる
温泉に入ったときに感じるぬめりやつるつる感には、アルカリ性の性質が大きく関係しています。
アルカリ性のお湯が皮膚表面の古い角質や余分な皮脂に作用することで、肌が滑りやすくなり、「ぬるぬる」「つるつる」と感じやすくなります。
ただし、実際の肌触りはpHだけでは決まりません。
炭酸水素イオンをはじめとした温泉成分の種類や濃度、温泉水全体の組成などによっても感触は変化します。
また、メタケイ酸やナトリウムなど特定の成分だけを取り上げて「これがぬめりの原因」と断定するのも適切ではありません。
温泉のぬめりを理解するときは、pHと泉質、含有成分を総合的に見ることが重要です。
さらに、アルカリ性温泉は肌がすべすべしたように感じられる一方、皮脂が落ちやすいため、入浴後に乾燥する場合があります。
肌の状態に合わせて入浴時間を調節し、必要であれば入浴後に保湿を行うとよいでしょう。
以上、温泉に入ったときに感じるぬめりの原因についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
